研究概要 |
1.炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRP)斜交積層板を購入した.積層板の種類は,45度および60度の斜交積層板と疑似等方性板である.斜交積層板は,いずれも解析の簡単のため3層構成とした.これらの材料を用いて25×100,20×80,15×60,10×40および5×20のゲージ部をもつ短冊形試験片を作成した.試験片の厚さは2mmで同一である.CFRP斜交積層板は,エッジ部の状態に非常に敏感であり,これまで,試験片の加工は業者に委託していたが,加工精度を上げるためにダイアモンドカッターを用いた. 2.それぞれの試験片において電気油圧式サーボ疲労試験機を用いて静的引張り試験を行った.ゲージ長の平均ひずみを求めて等価弾性係数を求めた.この結果より,(1)現有の0度材は,斜交積層板の1種と考えられるが,この斜交角を横軸に,等価縦弾性係数を縦軸にとると,斜交角が大きくなるに従って初期等価縦弾性係数は減少するが,この値が,3次元有限要素法で予測した値と,積層理論で予測した値の間になることが解った.(2)破壊に至るまでの非弾性挙動は45度の斜交角の時が著しく大きく,これより大きい角度の時はほとんど見られなくなった. 3.試験片の衝撃破壊プロセスを確認する.現有の自作による衝撃試験器を用いて400gの衝撃子を50cmの高さより落下させて衝撃損傷を与え,この時試験片に発生した損傷を超音波顕微鏡を用いて確認した.この結果(3)30度の積層角の試験片と60度の積層角の試験片に発生した損傷は,特に層間はく離の形状において角度を90度回転することでほぼ一致した.つまり,試験片の幅が25mm以上ある場合には,試験片のエッジ(縁)の影響が現れないことが示された. 4.現有の疲労試験機では,テーマである小規模材料の疲労試験を行うのが困難であるため,アクチュエータを購入して試験機の製作に取りかかった. なお,成果の公開に関しては,疲労試験結果が出そろった時点で考えている.
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