研究概要 |
本研究は工具電極に鋼などの実用金属を用いた微細放電加工により電極材料を工作物上に付着させ,微細な3次元複雑形状の造形を行うことを目的としている.工具電極に垂直方向の送りを与えた場合に付着によって柱が成長することを昨年度までに確認しているため,本年度は任意の形状を造形する技術の開発を行った. 任意の形状を造形するためには,平面上に厚さの均一な曲線を描くこと,均一な厚さで面を塗りつぶすこと,それらを積層すること,および,斜め上方へ付着物を成長させるときの成長方向(角度)を制御することなどが課題となる.はじめに,工具電極に水平方向の送りを与えることで平面上への曲線の描画を試みた.電極送り角度や送り速度,サーボ動作の方向などを変化させて実験を行った結果,水平方向の送り速度を十分に小さくした場合に付着厚さの均一な線が描けることがわかった.また,円弧や角部を有する工具軌跡を与えた場合でも付着加工が安定に進行することを確認した.次に,前述の線を適切な間隔で多数並走させることで面の形成を試みた.しかし,隣り合う線の密着性が良好でない可能性があるため,加工方法をさらに検討する必要がある.線を積層することで壁状の造形物を得ることについては,特定の箇所に付着が集中することなく加工面全体で安定に加工が進行することが確認された.しかし,付着物の断面を観察すると層間に空隙が見られる場合があることから,層間の密着性や製品の緻密性について改善する必要がある. 本年度は以上のほかに,電極送り角度と付着物の成長方向の関係を調べ,任意の形状を造形するための基礎データを得た.また,電子顕微鏡を用いて単発放電時の加工面の詳細観察を行った結果,本加工においては電極材料が溶融した状態で工作物側に移着している可能性が強いことがわかった.
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