研究概要 |
本研究はYAGレーザにより金型を用いないでプラスチックを所望の形状に成形する加工法について検討している.本加工法におけるプラスチックの変形機構を明らかにするとともに,変形のコントロールを可能とし,プラスチック材料の新しい成形法としての確立を目指すものである.本年度は,既存のX-Y位置決めシステムにZ軸およびθ軸を追加し,加工の自由度を増すことができるように加工ステージを改良した.また,基礎実験から以下のような所見が得られた. アクリル樹脂,ポリカーボネートおよび高密度ポリエチレンの3種のプラスチックに対してYAGレーザ光を用いて直線の曲げ加工を行ったところ,熱膨張係数の最も大きい高密度ポリエチレンが最大の変形量を示した.また,レーザ照射部の試料表面温度が200℃前後において最も大きな変形量が得られことが明らかとなった. 試料表面でのレーザ光の吸収が加工結果に影響を及ぼすことが考えられるため,吸収体の作製方法を検討した.カーボン蒸着,カーボン粉末スプレーおよびアクリル樹脂塗料を用いて作製したところ,アクリル樹脂塗料が約97%と最も大きな吸収率を示した.さらに塗料の塗布方式をスプレー方式と浸漬法による方式とを比較したところ,浸漬法を用いた方が大きな変形量が得られ,加工の再現性もよく安定した加工結果が得られた. 変形時の試料先端の変位量とレーザ光照射部の温度を測定したところ,大きな変形量を得るためには,適切な温度域まで加熱した後,冷却過程における収縮を効果的に引き起こすことが重要である.また,収縮が完全に終了する前に次の加熱が始まると変形量が安定しないことから,変形の精密な制御を行うためには,照射が終了した領域の材料が十分に冷却された後に次の照射を行うことが望ましいことが明らかとなった.
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