研究概要 |
本研究では,従来型のcBN工具が極端に熱膨張率の異なる物質[c-BN粒子(4.7×10^<-6>/℃)と結合剤(7.6〜5.1×10^<-6>/℃)]からなる複合型工具材であり,熱疲労が原因で生ずるサーマルクラックの抑制は極めて難しいと考えられる.そこで,結合剤の含まれないc-BN粒子の単一組成からなる新規cBN材料(バインダーレスcBN)の開発とその効果について検討する.本年度は(1)工具材料の作製,(2)高速ミーリング加工時の切削特性の把握と(3)工具損傷メカニズムの解明を試みた.(1)については,結合剤を用いないで高温高圧条件でhBN粒子を直接変換させることにより,常温硬度HV5000,常温3点曲げ強度1.2GPa,熱伝導率500W/m・Kの諸特性を有すバインダーレスcBN焼結体を得た。(2)については,上述したバインダーレスcBN焼結体を用いて高速乾式条件(2000m/min)下で切削距離100km以上の切削を行った場合においてもサーマルクラックの発生は発生せず,優れた耐サーマルクラック特性を有していることを明らかとした.また,加工物の表面の黒鉛部分が表層流れにより覆い隠され,Ra:0.3μmの極めて良好な加工面を得ており、ねずみ鋳鉄材料の加工面としては驚異的な表面粗さの実現に成功した。(3)については,切削環境を湿式環境とすることにより,刃先温度の加熱・冷却温度を変化させた実験的なアプローチを行い,バインダーレスcBN工具サーマルクラック発生領域を明らかとした.
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