研究概要 |
差圧式流量計の絞り機構部分に用いられているノズルを,高速流動研磨装置を用いて精密に研磨することを試みた.試料にはφ10mm,t=0.5mmのSUS304板の中心に,最も内径の小さい部分(A面側)で,400,300,80μmとなるようにプレスで加工したものを用いた.断面形状は,A面からB面にかけて穴径が少しずつ拡大しており,その拡大の度合いはB面に近づくにつれて大きくなるように設計してある.また,穴径が異なっていても,流量特性に差が出ないよう相似形になるように加工してある.試料内壁部分を光学顕微鏡で観察してみると,プレス加工痕と思われる鱗状の痕が残っており,汚染物質の付着による流量精度の悪化や,残留応力の影響が予想される.これらの影響をなくすためにも研磨が必要であると考えられる. 基礎実験として,試料を取り付けられるジグを作成し,既存の装置に装着して研磨実験を行った.実験は,平均粒径20μmの砥粒を用い,砥粒濃度3.44vol%,研磨圧力4.9MPa,パス回数10回で行った.その結果,試料内壁には局所的に除去されている部分があり,均一な研磨がなされていない事がわかった.また,表面粗さに関しても,同様の理由から場所によって値が異なる事がわかった.この原因として,加工液の流速が大きすぎること,試料を取り付ける部分の形状が加工液を集中的に送り込めていないことが考えられる.これらを考慮して,新たにジグを製作し直し,実験条件を最初の実験より小さな値を用いて実験を行った.しかしながら,形状の変化は小さくなったものの,内壁全体を均一に研磨することは出来なかった.本実験の目的は,粗さの低減を行い,ノズルの開き角度およびノズルのエッジ部分の形状を損なわずに真円度を保ったまま内径をコントロールすることであるが,目標とする実験結果を得るために,更なる装置の改良と実験条件の選定が必要である.
|