フォトリソグラフィーにより微細構造物を形成する手法は、高い分解能を持ち、複雑なパターンをパッチ処理により大量生産可能であるという特長を持っている。近年、フォトレジスト等の改良によりかなり厚みを持った構造体を形成することが可能となりつつあるが、これらの手法により形成可能な構造体は柱状構造に限られている。一方で、研究代表者らが研究を進めてきた超精密機械加工法による微細構造形成法は、3次元的な複雑形状を形成可能であり、金属、プラスチック、ガラス、セラミックスなどの多種多様な材料に対して適応可能であるという特長を持っている。そこでこれらの2種類の手法を組み合わせることにより新たな微細構造の形成方法を開発するのが本研究の目的である。本研究では、実際に厚膜フォトレジスト(SU-8)を用いてシリコンウエファー上に厚さ約100ミクロンのパターンを形成し、これを導体化処理することによりエレクトロフォーミングプロセスを実施し、ニッケルにより形成されたパターンを作製した。しかしながら、この状態では、エレクトロフォーミングされた表面は凹凸が大きく、更なる積層や表面への超精密機械加工による微細構造の付与は困難である。そこで、超精密研削加工法および超精密切削加工法を用いてこれらの構造物の加工を行い、加工法の特質の比較と適応の可能性を検証した。その結果、超精密研削加工法によればフォトレジストおよびエレクトロフォーミングされたパターンの損傷を引き起こすことなくこれらの構造を加工可能であり、かつフォトレジスト部分の軟質材とエレクトロフォーミングによって形成されたニッケル部分の硬質材を均等に加工可能であることが判明した。これらのことより、厚膜フォトリソグラフィと超精密機械加工法による微細構造層製法の組み合わせが可能であることが示された。
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