研究概要 |
本研究では,スパッタにより固体表面に数nmの薄膜を被覆させ,その薄膜が接触によって他の固体表面に移着することを利用して,真実接触面積を検出する方法を提案し,検討してきた.これまでの実験によってスパッタ薄膜を用いた方法によってμm以下の接触部の検出が可能であることが確かめられてきた.そこで本年度は,スパッタ薄膜を用いた方法の有用性について詳細に検討を行なった.ここでは,数nmR_aの微小な粗さを鋼球試料表面につけた後にガラス平面に押し付ける実験を行ない,その場合の接触部の様子について検討した. 表面粗さが測定範囲20×20μm^2で13nmR_aおよび6.8nmR_aになるように仕上げた鋼球の粗い面を滑らかなガラス平面にそれぞれ同じ荷重でヘルツ接触させた実験により得られた主な結果は次のとおりである.(1)いずれもの粗さも接触こんはほぼ円に近くなっており,外周に行くにしたがって接触点がまばらになる様子が観察された.なお,粗さの小さい6.8nmR_aの場合は,接触部が広範囲に広がり,接触こんの中心ではほぼ全体が接触した.これは,中心部では変形量が大きくなるために鋼球表面の突起がつぶれてほぼ完全にガラス表面と接触したためと考えられる.この点については現在FEMを用いた解析により検討中であるが,定性的には実験と一致する結果を得ている.(2)接触部を測定する場合の精度としては,水平方向で10〜30nmであると考えられる.(3)圧力分布は,従来ヘルツ接触の場合に比べて接触こんの中心がより低く外周に向かうにしたがってすそが広がるとされているが,今回得られた接触率の変化はこれと定性的に一致することがわかった. 来年度にかけて,この方法の有用性についてより詳細な検討を行なうため,試料表面の吸着分子(特に水分子)の影響を極力取り除くために,真空環境下での接触実験を行っている.
|