研究概要 |
マイクロ・ナノテクノロジーの分野では,表面力の効果が支配的となるために,ナノメートル厚さの潤滑剤を介した相対運動の力学的な特性に関心が高まっている.とくに磁気ディスク装置においては,ディスク表面の潤滑剤の厚さが1nmまで薄膜化されており,ヘッドディスクインターフェースの信頼性を確保するために,動的な表面力の定量化が重要な課題となっている.そこで本研究では,表面力の動的測定のための装置の開発および超薄膜を介した2表面の相互作用のモデルを構築することを目的としている. 1.実験装置の構成 (1)三次元変位可能なチューブスキャナを導入し,試料の水平駆動を可能にした.チューブスキャナは,各軸間の連成は避けられない構造であるが,チューブ面に円周上に配置された4枚の圧電素子に電圧を印加する場合に,連成を最小にする組み合わせと電圧の印加方法が存在することを確認した.この方法を用いて,水平方向の変位に連成する垂直変位を25%減少させた.(2)シリコン光学反射面付のカンティレバーを導入し,従来と比較して,変位については約5倍,傾きについては約9倍精度を向上させた. 2.画像処理方法の開発 シリコン光学反射面付のカンティレバーの導入により,新たに放物線回帰による最小二乗近似法を用いた干渉縞のピーク検出を可能にした.この結果,直線性の高い尾根線が得られた.この結果,変位・傾きともに測定精度を約1.3倍向上させた. 3.表面力の計測 磁気ディスク表面に潤滑剤としてPFPE系(FOMBLIN Z-dol 2000)を用いて,触針の垂直方向への分離実験を行った.分離過程のメカニズムとして有限分離モデルを導入し,数値計算により分離時の接触力と潤滑膜の伸びを求める方法を開発した.この方法により速度増加とともに接触力が微増し,膜の伸びも増大して,膜厚の百倍にも達する可能性があることを明らかにした.
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