研究概要 |
希薄気体中の放電プラズマはエッチングやスパッタリングなどの材料プロセシングにおいて重要な役割を担っている.多くの物理的,化学的な要因が放電構造を支配しているが,最も重要な物理量の一つに電子のエネルギー分布関数(EEDF)があげられる.なぜなら,プラズマ中における全ての反応の発生レートはEEDFによって決定されるためである.本年度は,主としてアルゴンガスを用いた誘導結合プラズマの粒子シミュレーションを行ない,EEDFに対する様々なパラメータの影響を系統的に調べた. アルゴンガス圧力を高くすると電子とアルゴン原子の衝突頻度が高くなり,EEDFはマクスウェル分布に近くなると思われたが,計算結果では逆にEEDFはより非平衡になった.これは圧力が高くなると,15eV以上のエネルギーを持つ電子が非弾性衝突を頻繁に起こし,そのエネルギー領域の電子数が減少するためである. またEEDFに対するクーロン衝突の影響を調べた.クーロン衝突は弾性衝突であるので,その頻度が高くなればEEDFがマクスウェル分布に近づく.本研究ではクーロン衝突の有無によるEEDFの変化の大きさによって,クーロン衝突の影響の大小を判定した.従来,クーロン衝突の影響の大きさは(電子密度)×(電子温度の-3/2乗)に比例すると信じられていたが,本計算結果では必ずしもそうならなかった.本研究ではクーロン衝突の影響の大きさを予測するための新しいパラメータを提案する. さらにEEDFの空間依存性や異方性についても調べ,過去に報告されている実験結果と比較し,定性的に一致することを確認した.これらのことについては現在投稿準備中である.
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