研究概要 |
本研究では血管平滑筋細胞に作用するせん断応力の大きさ、並びに分布状態が細胞の生理学的・代謝学的機能に及ぼす影響を実験的,数値解析的に解明することを目的としている。交付申請書に記載された研究計画に基づき本年度は以下の検討を行った。 遂行予定の実験条件を元にコンピューターによる数値解析を行った.計算は複雑な幾何形状を持つ血管組織内部のモデリングを行う為、解適合座標系を用いて流れの基礎方程式を離散化し,血管平滑筋細胞周囲の流れ・反応・濃度場の数値解析を行った。計算対象となる生化学物質には動脈硬化のイニシエーションと密接な関係を持つ平滑筋細胞の内膜遊走・増殖を促進する作用を持つ低比重リポ蛋白とアデノシン3リン酸を選定し、さらにこれらの生化学物質が内弾性板を経て血管内腔から浸透するという状況を想定した。計算結果から、平滑筋細胞表面での生化学物質の輸送機構の詳細が明らかになった。特に低比重リポ蛋白が平滑筋細胞表面で受容体を介して細胞内部に取りこまれる過程においては、内弾性板の障害等が重要となることが明らかになった。その一方で、本研究の最終目的である細胞内シグナル伝達とせん断応力との関係を明らかにする上で必要な現象論的モデルの構築が必要であることが判明した。新たな課題として、このモデルの構築に向けた詳細な数値解析と実験の遂行が浮かび上がった。
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