研究概要 |
近年発生した国産ロケットH-IIの爆発事故の原因の一つとして,ターボポンプインデューサの翼の疲労破壊が挙げられている.その引き金は,インデューサ翼面に発生した非定常キャビテーションによって生じる非定常流体力ではないかと考えられている.このような状況下で,非定常キャビテーションが発生した翼面に作用する非定常流体力を推定することが最重要課題となってきた.そこで非定常キャビテーション発生下の2次元翼列に生じる非定常流体力の検討を,キャビテーションの解析において世界的な権威である大阪大学の辻本良信教授および九州大学の渡邉聡講師の主導のもとに行ってきた.この過程で得られたキャビテーションによる流体力の解析手法は,交互翼キャビテーションの準3次元解析においても適用可能であり,きわめて有用である. 旋回キャビテーション時の流体力の解析では,揚力変動は基本的にはキャビティが存在する部分での圧力差によることが判明した.また,この圧力差はキャビティが伸び縮みしてもあまり変動しないことが明らかになった.キャビティが翼間に到達しない場合には,負圧面側の圧力変動によって非定常流体力が生じ,キャビティが翼間に到達する場合には,隣接翼のキャビティの影響を受けることによって生じる翼前縁付近の圧力面側の圧力の変動と,負圧面側の圧力変動によって流体力が生じることが明らかになった.流量変動を伴う流れに対する解析では,流量変動の周波数が高くなると,圧力面側の圧力が翼面全体にわたって変動し,その振幅は翼前縁から後縁にかけて大きくなることがわかった.また,翼面圧力差変動の振幅は翼後縁を除く翼面全体で見られ,その振幅はキャビティ後縁付近で大きくなることが明らかになった.入口部での圧力変動を伴う流れに対する解析でも,流量変動を伴う流れと同様の結果が得られた.
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