研究概要 |
ある種の色素から放射されるリン光の酸素消光現象を利用すると,物体表面上の酸素あるいは空気の圧力変化を光学的手法によって計測することができる.このような,光学的圧力検知センサーとしての機能を有する色素をプローブとして用いた表面圧力計測法を非定常流れ場に適用する場合に生じる種々の技術的課題を解決すべく,管内を伝播する衝撃波に誘起される非定常流れ場を利用して,実験的研究を行った.今年度得られた重要な知見は以下の通りである. 1.半導体発光素子によるプローブ色素の励起法について 半導体発光素子として発光ダイオード(日亜化学工業社製,NSPB500S,波長ピーク470nm)とレーザーダイオード(同社製,NLHV500A,発振波長405nm)の2種類の光源を用いた実験から,両者ともに出力が極めて安定しており(0.2%以下),圧力計測結果に及ぼす励起光の変動の影響はほとんどなく,その有効性が確認された.前者は単体では光量が不十分であったが,100個程度を同時に用いることによって計測に必要な十分な光量が得られた.また後者は,出力光を光ファイバーへと導くことによって,高い空間分解能を有するカセグレン光学系との組み合わせが可能となった. 2.異なる2種類の多孔性薄膜によるプローブ色素の固着法について 薄層クロマトグラフィー用シリカゲル薄膜と浅井ら(航空宇宙技術研究所)によって開発されたアルミニウム陽極酸化皮膜の2種類の多孔性薄膜上にプローブ色素を固定し,時間分解圧力計測で使用するバインダーとしての有効性を調べた.その結果,両者ともに数十μsの時定数を有し,時間分解圧力計測に対して有効なバインダーとして機能することが確認された.物体壁面への付着強度に関して,後者は前者に勝るが,吸着可能な色素が限られてしまうという欠点があるため,これらに代わる別の色素固定法の開発が待たれる.
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