本研究は、超急速熱移動現象である蒸気爆発を応用し、アモルファス金属などを含む金属微粒子の製造の可能性を調べるための基礎研究である。平成12年度は、通常の自発的蒸気爆発における蒸気爆発発生位置が両液体の温度条件によって変化する特性を利用し、低温液体内に高温部と低温部を任意に作ることによりこの爆発発生位置の制御を試みた。実験では、高温融体として溶融スズ、鉛、亜鉛、低温液体として水を使用した。低温液体中に高温部と低温部を作る方法として、容器上部にヒータを設置することで容器上部を高温(90℃)以上に設定し、容器下部を低温(20〜40℃)にすることで水中に温度急変域を設けた。その結果、溶融スズと鉛を用いた実験では、この温度急変域を通過した直後に自発的に蒸気爆発が発生することが確認された。特に、水面下10cmより深い位置に温度急変域を設定することにより均一水温の条件に比べてほぼ一様な粒度分布となることが分かった。また実験条件のスズ温度範囲(450℃〜600℃)では、初期スズ温度によらず平均粒径が500μm程度のほぼ一定の値になることが明らかとなった。一方、水温が均一条件でかつ、自由液面近傍で蒸気爆発が発生する場合には完全な微粒化が生じる前に自由液面との干渉で空気巻き込みが生じて微小粒子が得られにくいことが解明された。ただし、低温液体中に温度急変域を設ける本手法においても溶融亜鉛では蒸気爆発は発生しなかった。蒸気爆発後に得られた粒子の形状として、溶融スズ、溶融鉛いずれについても複雑に入り組んだ形状(フレーク状)で凝固していることが判明した。両液体の界面近傍の様相観察も併せて行うことにより、爆発の直前に自発核生成によると見られる気泡ができることが分かった。
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