研究概要 |
本研究は将来のマイクロ熱交換器を念頭におき,熱交換器内の流れがすべり流となるようなマイクロスケールにおいて,主に流体の希薄性・圧縮性が熱流動場に与える影響について数値解析的手法を用いて検討し,マイクロ熱流動現象の基礎的知見を得ることを目的としている. 平成12年度には,当初の計画通り既存のマクロスケール熱流動場解析用コードを改良し,流体の希薄性と圧縮性を考慮に入れたマイクロスケール流れ用計算コードを作成した.この計算コードを用いた単純形状流路流れの結果は解析的に求まる結果と良好に一致し,コードの妥当性が確認された.そこで本来は次年度に行う予定であった,はく離・再付着を伴う複雑熱流動場についての検討を行うべく,更なるコードの改良を行った.これを用いてマイクロスケールにおけるバックステップ流れの数値解析行った結果,流体の圧縮性が熱流動場に大きな影響を与えること,特に流路の急拡大部では圧力低下に伴い流体が膨張し局所的に流体温度が下がること,それによりその位置での見かけの熱伝達率が非圧縮を仮定した場合の結果に比べて増大することなどがわかった. さて,上述の計算のコードは支配方程式である楕円型偏微分方程式を数値的に解いたものであり,循環流がある場合などの複雑熱流動場の解析には適する.しかしながら,実験的研究でたびたび使用されるような,管径に比して流路の流れ方向長さが非常に長い場合の流れ場の数値解析に適用すると,非常に長い計算時間が必要となるなどの問題点が明らかになった.そこで支配方程式に境界層近似を施すことで得られる放物型偏微分方程式を数値的に解く計算コードを新たに作成し,流体の圧縮性・希薄性の影響について検討した.その結果,流れ方向圧力分布が非線形化すること,断面内の流速分布が放物型分布ではなくなることなどがわかった.
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