研究概要 |
工業装置や自然界の実環境下にある実在表面は,実験室の清浄な光学鏡面とは著しく異なり,表面にはミクロなあらさがあり,その表面はなんらかの被膜で覆われているのがふつうである.加えて,その表面状態は実環境下で時々刻々にも変化する.また,積極的に表面状態を変化させる表面の物理・化学プロセスも実用化されている.このような実在表面について,その熱ふく射特性を伝熱の評価のために明らかにし,あるいは,ふく射を応用する表面状態診断法を確立するには,分光学的な手法を検討するのが望ましい. 本年度(平成13年度)は,昨年度に引き続き,本研究の主たる実験装置である広波長域高速ふく射スペクトル測定装置の開発を進め,ほぼ完成するに至った.装置は,波長0.3〜11μmの近紫外〜赤外域の93波長点からなる表面の放射・反射スペクトルを2sのサイクル時間で同時にくり返し測定できる.第2に,この装置を用いて,高温大気酸化過程にある金属(Fe, Cr, Ni, SUS304)表面の時々刻々に変化する表面の反射・放射スペクトルの推移を調べる実験を行った.その結果,ふく射の干渉・回折挙動が,規則的で再現性のよいものであり,また多くの金属に一般的なものであることがわかった.第3に,そのような実在表面の温度・性状を時々刻々に診断する表面状態のインプロセス診断アルゴリズムを改良することを試みた.そこでは,測定されたスペクトルの反転解析に耐える簡明な実在表面のふく射反射・放射のモデルを示した.検証実験を行い,そのすぐれた性能を例証した.
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