熱流体現象を用いた新しいマイクロアクチュエーターとして、表面張力の不均衡を熱的に与えることで気泡が駆動される現象を利用しようとしている。今年度は二枚のガラス基板をはさむ形で厚さ10ミクロン程度の感光性ポリイミドをパターニングして壁とすることで、幅70〜200ミクロン程度のマイクロ流路を形成し、その中での蒸気気泡の駆動の様子を調べた。ヒーターとしては500ミクロン間隔で直線状に並べられた大きさ50ミクロン程度のニッケル薄膜を液体と接触する形で用いた。ヒーターを各種制御しながら高速度ビデオを用いて蒸気気泡の駆動速度を調べた結果、最も依存性が強いのが気泡サイズであり、サイズが同じ場合は気泡速度はヒーターの温度に依存することがわかった。これは気泡が大きいほど、界面間の距離が大きくなって温度差が付きやすいことが理由と考えている。 またCIP法とレベルセット関数を組み合わせた独自の数値流体コードを開発してマイクロチャンネル中の非凝縮気泡の駆動をシミュレーションすることに成功した。このようなマイクロスケールでの気液界面を有する流体の数値計算コードが完成したことは非常に価値があることである。具体的には、左右の界面の温度による表面張力の違いが、どのように流体の動きに変換されるかが初めて明らかにされたと考えている。さらに、計算で得られる駆動速度は、スリップ条件およびチャンネル壁面と気液界面の接触角に大きく依存することがわかるとともに、今後の数値モデル構築の指針を得ることができた。
|