研究概要 |
本研究の目的の一つである,本質的に「柔らかい」ロボットシステムの構築に向けて,「超柔軟システム」を提案し,その動力学挙動の解析を行い,またその知見に基づき系の特性を利用して制御を行う方法を提案した.「超柔軟システム」とは,従来研究されてきた弾性に基づく柔軟構造のモデルに対して,弾性を持たず粘性のみを有する,より柔軟な系を考えるものであり,その大きな特長として弾性や重力などのポテンシャルによる平衡点を持たないことから,あらゆる形状において静止可能であり,従来の柔軟システムに対して大きな自由度を有する点が挙げられる.本研究では受動関節により連結されるリンク系がその一つのモデルとなることを示し,またその動力学挙動の解析を行った.周期摂動入力により,系をある平衡点に収束させることができることを明らかにしている.また,その性質を用いた形状制御の方法も提案している. また応用研究として,メカトロニック人工食道のための咀嚼物搬送機構の試作開発を行っている.特に食道癌の手術における代替を目的として,食道の蠕動による咀嚼物の嚥下機能を代替することができる機構の開発を目指している.食道は胸腔内の非常に狭隘な空間にある細長い管状臓器であり,周囲に肺・心臓・胃など常に大きな運動を行う臓器が存在することから,代替する機構として非常に柔軟性が高いものであることが必要であり,またその駆動制御においてはそうした非常に柔軟な機構を対象としたシンプルでロバストな駆動機構および制御法の開発が必要である.初年度においては,人工食道内外の密閉性を確保できるような駆動機構の開発を行い,咀嚼物の搬送に必要な駆動トルクなどを求めるための運動学的・力学的解析を行った.また,そうした機構の開発を行うとともに,その制御法の基礎となるべく,上述のような非常に柔軟なシステムに対する動力学挙動の解析と制御法の開発を行っている.
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