研究概要 |
本研究の目的の一つである,本質的に柔らかいロボットシステムの構築に向けて,超柔軟系を提案し,その動力学挙動の解析を行い,またその知見に基づき系の特性を利用して制御を行う方法を提案した.超柔軟系とは,従来の弾性の存在を前提とした柔軟系モデルに対して,弾性をほとんどあるいは全く持たない,ひもや糸,ロープなどのような,より柔軟な系を考えるものである.本研究では受動関節により連結され,根元のみが駆動され得るような多リンク系がその一力学モデルとなることから,多自由関節系モデルとして超柔軟系の動力学解析と制御を行っている.平成12年度においては,周期摂動入力により,系をある平衡点に収束させることができること,およびその性質を用いた形状制御法を提案した.平成13年度においては,さらに重力項も含めた定式化を行い,多自由度にも適用可能な一般式を導出したほか,多自由関節系を重力に抗して任意の方向に動的に安定化する方法を示し,さらにはインピーダンス制御による力制御法を提案した. また応用研究として,メカトロニック人工食道のための咀噛物搬送機構の試作開発を行った.特に食道癌の手術における代替を目的として,食道の蠕動による咀噛物の嚥下機能を代替可能な機構の開発を目指したものである.食道は胸腔内の非常に狭降な空間にある細長い管状臓器であり,周囲に肺・心臓・胃など常に大きな運動を行う臓器が存在することから,機構として非常に柔軟性が高い必要であり,また駆動制御においてはそのような非常に柔軟な機構に対してシンプルでロバストであることが重要である.平成12年度においては,人工食道内外の密閉性を確保できるような駆動機構の設計を行い,咀噛物の搬送に必要な駆動トルクなどを求めるための運動学的・力学的解析を行った.平成13年度においては,その機構のプロトタイプを製作し,実際に人間に適用できる機構を開発するための予備実験を行っている.上述の超柔軟系に対する動力学挙動解析と制御は,そのような機構の制御法の基礎となるものである.
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