研究概要 |
本研究では磁気ディスク装置のヘッド位置決め機構を対象に,20 Gb/inch^2を実現できる追従誤差の少ないヘッド位置決め機構-制御系を明らかにすることを目的に研究を行った. 本研究で対象とする磁気ディスク装置のヘッド位置決め機構-制御系に対しては,エリアスを有するサンプル値系に対して高いサーボ帯域を有する追従制御器の設計法の確立が必要である.この問題に対して研究代表者は,(1)ZOH,計算遅れ,エリアスを考慮した連続時間領域の制御対象モデルの作成,(2)連続時間領域でのH∞混合感度問題の定式化とH∞最適制御器の設計,(3)位相適合法による離散時間制御器の再設計,という制御系設計スキームを提案している.本年度は,まず,従来形,同相設計形および高減衰形の3種類のヘッド位置決め機構に対して提案する制御系設計スキームを用いて,低次数,低サンプリング周波数の制御器を設計し,追従サーボ帯域の比較を行った.その結果,(1)提案する制御系設計スキームにより高サーボ帯域の制御器の設計が行えること,(2)サーボ帯域は,同相設計形<従来形<高減衰形の順に高くできること,を明らかにした.このとき,従来形および高減衰形のサーボ帯域の制限となるのは4.3kHzの主共振モードであったが,同相設計形のサーボ帯域の制限となるのは8kHz以上の固有振動数を有する高次振動モードであることを明らかにした. 次に,主共振を非干渉化しながら高次振動モードの共振ピークを抑えることができる新たな位置決め機構を作成し,測定した周波数応答関数を用いたシミュレーション結果により,提案した位置決め機構を用いれば,従来形の位置決め機構に比べ約1.2倍にサーボ帯域を向上させることができることを示した.
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