[目的・方法]本研究では、磁気共鳴画像(MRI)下で駆動するマニピュレータの試作を行ってきた上で問題となった、マニピュレータ高磁場内での位置・方向制御および位置情報の統合(Registration)に関する研究を行なう。本年度は、既に開発を行なってきたMRI画像誘導下穿刺マニピュレータの自由度(回転部2自由度+穿刺部1自由度)を増やし、計6自由度の機構を試作し、位置制御実験およびそれを行なうための画像歪みの計測実験を行なった。回転機構に関しては仮想球原理をタイミングベルトとリンクを用いた平行リンク機構により実現し、穿刺部は摩擦による針送り機構を採用し、確実な穿刺針送り機能を実現した。[実験]機械特性評価実験を行なった。角度誤差0.4度以下の制御を行なうことが可能であった。多段ギアによりバックラッシュが3.4度と生じたが、仮想球原理により中心位置が保証されているため、最終的な精度には影響しない。また、MRI画像への影響を調べる実験を行なった。これにより、マニピュレータと撮像対象との距離により画像歪が非線形に変化することが計測された。またある特定の撮影方向の歪が生じないことが明らかとなった。[考察・結語]機構的に金属部品類、特にアクチュエータを撮像範囲から遠ざけることにより、画像歪の影響を最小限に抑えることができた。また、MRIガントリ内に存在する磁場勾配の変化のモデル化を試みた。基本的には撮影対象物の材質・形状・大きさにより磁場傾斜は比例してずれ、それにより画像の位置そのものが線形にシフトするはずである。マニピュレータの位置が遠い場合はこの線形シフトが成立するが、近傍においてはより高次の歪シフトモデルが必要であることが明らかとなった。次年度は、簡便な座標統合デバイスの追加および、歪補間・制御を統一させたソフトウェアを作成しまとめる。
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