研究概要 |
近年,仮想空間に構築した環境(対象物)を視覚のみならず触覚や力覚をも利用して体感する仮想現実感生成技術が注目されている.本研究では仮想対象物の弾性特性を人の手に呈示する装置(ヒューマンインターフェース)の開発を目的とし,空気圧シリンダを駆動リンクとするパラレルマニピュレータを骨格部とする掌サイズのヒューマンインターフェースを試作・開発した.具体的には本マニピュレータに人が指で力を印加し,どの指がどれほどの力を印加したかをマニピュレータに検出させる.そして,仮想空間に構築した対象物と手のモデルの相対位置関係よりその指に望ましい弾性特性を呈示するものである. 空気圧サーボ系は空気の圧縮性のため位置制御系を構成した場合でもマニピュレータは一種の弾性体として機能する.そこで,従来より提案している外乱オブザーバを導入して圧力制御に基づいた位置制御系を構成し,本位置サーボ機構の弾性特性を利用して力センサを用いることなくマニピュレータに印加した力のベクトルと接触点を検出する手法を提案した.続いて,検出した接触力をフィードバックしてコンプライアンス制御系を構成することで,力を印加している指に所望のコンプライアンス特性を呈示する手法を提案した.設定コンプライアンスの実現精度を実験的に検証した結果,任意の点に対して任意のコンプライアンスをほぼ実現できることが確認された. 現時点では設定コンプライアンスの値はソフトウエア上で与えているが,本来は計算機等に構築した仮想対象物と手のモデルの相対位置関係から求める必要がある.このため,汎用グラフィックライブラリであるOpenGLを用いて仮想対象物を構築し,力覚と視覚による実体感を伴った対象物の認識動作を行っていく予定である.
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