研究概要 |
本研究の目的は、対象を老人性難聴者として、フィッティングの専門家と同等の機能を実現可能な自律適応型補聴器を実現するための基礎的アプローチを試みることである。本年度は、1.機械学習をデジタル補聴器の周波数調整に適応するための理論の構築、および2.学習に必要な教師信号として適切な生体信号に関する基礎的データの収集を行なうことである。1.に関して、本システムではON-LINE性を重視する。第一段階として、学習するパラメータの数の少ないアプリケーションに対して、Interactive Q-Learningを構築した。試験的に作成したアプリケーションはシミュレーション上の移動ロボットによるゴール到達問題とした。被験者が不快と感じた時に負の報酬を与えることにより学習をする。実験結果より、一般的なゴールに到達したときの正の報酬を与える場合よりも学習が早く収束することがわかった。しかし、報酬を与え続ける被験者が途中で飽きてしまうため、より早い収束が求められる。今後、収束速度の向上をし、パラメータの多いデジタル補聴器の周波数調整に適応する。2.関しては、EEG,EMG,瞳孔の3種類の生理指標を測定し、不快な音の特徴量を検出するための基礎データを収集した。数種類の不快な音のもとで20人の健常者に対する基礎実験を行なった。さらに、タスクに集中している時に不快な音を聞いてもらい、そのときの生体信号を測定した。基礎データを解析した結果、不快な状況下から開放されたとき、高周波成分がでることがわかった。しかし、すべてのタスクにおいて同じ結果がでるわけでない。現在、不快の特徴量を自動的に抽出するための学習機構を構築中である。
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