初年次平成12年度は実験装置の構成(現有プラズマ反応容器の改造)と堆積条件などの基礎データ整備のための予備実験を行なった。 C_7F_<16>の導入系に凝結防止用のヒーターを設置し、同材料が安定に供給されるようにした。また、同導入系のアナログ手動調整式の流量計をディジタル式流量計に交換し、材料蒸気圧の監視精度と供給安定度の向上を図った。 試験的なフルオロカーボン薄膜の堆積実験では、薄膜堆積が可能な条件を確認し、オプティカル・マルチチャネル・アナライザによるプラズマの分光観測系の調整を行なった。また、今後の比較のため、予備実験で堆積した薄膜について、XPSピーク強度比測定によるF/C組成比の推定、エリプソメータによる膜厚・屈折率測定、静電容量測定・比誘電率の算出、正極性針対平板電極系を用いた絶縁耐力測定を行なった。 フルオロカーボン誘電体薄膜のF/C組成比は、C_7F_<16>蒸気のみを供給し圧力を60Paから40Paに下げた場合、あるいは、C_7F_<16>蒸気60Paにヘリウムを70Pa程度まで混合した場合にF含有比率が上昇し比誘電率が減少する傾向が見られた。比誘電率は2.1〜2.6の範囲であった。堆積条件を変化させることで組成制御が可能であることが示唆された。 また、フルオロカーボン薄膜の堆積速度は、CF_4プラズマCVD法による堆積速度の報告例よりも最大で1桁程度速く、分子量の大きな材料を使用した効果が示唆される。また、C_7F_<16>蒸気圧の減少に伴いプラズマ中の電子エネルギーが上昇しラジカル種生成が促進されること、あるいはヘリウム準安定励起種が気相中や堆積膜表面で作用すること、などの効果も検討中である。
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