研究概要 |
本研究の目的は,低温プラズマ発生装置用のスイッチング方式高周波電源として,5〜10MHz帯の高周波動作が可能な電圧形インバータを開発することにある。本研究では,高周波動作を実現するために必要不可欠な,電圧形インバータの配線インダクタンスの低減効果,三次共振回路による高速スイッチングの効果および新しい素子レイアウトの放熱特性を実験により確認する。 平成12年度は,5MHz,2kWのハーフブリッジインバータを試作し,基本的な動作特性を検討した。まず,新しいMOSFET用高速ゲート駆動回路と高周波動作が可能な制御回路を開発した。新しいゲート駆動回路には,5〜10MHzの高周波動作を実現するために,7〜15nsの短時間にMOSFETモジュールのゲート容量を充放電できる能力が要求される。特に,メタルゲート方式を採用した高速MOSFETを用いるため,比較的大きなゲート容量を駆動できる能力が必要となる。また,制御回路には,1ns程度の精度でオン・オフのタイミングを調整できる能力が求められる。これらの回路動作を回路シミュレータ(PSpice)により検討し,回路定数の最適化を行った。 次に,5MHz,2kWの電圧形インバータを試作する。スイッチング素子の新しいレイアウトを採用したインバータ主回路を構成した。調整や測定が容易となる点から,インバータ主回路には2個のMOSFETモジュールを用いたハーフブリッジ構成を採用した。これは,薄型MOSFETモジュールを背あわせに配置するBTBレイアウトを導入し,モジュール間の配線インダクタンスを大幅に低減している。試作したインバータを用いて,高速ゲート駆動回路の性能と新しい素子配置による配線インダクタンス低減効果を主要設備備品のディジタルオシロスコープを用いて検証した。 その結果,制御回路で1nsの精度でオン・オフのタイミング調整を行っても,温度変化により駆動回路には3ns程度の変化が生じるため,ブリッジ構成では10MHz以上の高周波動作は困難であると考えられる。このため,平成13年度は,ブリッジ構成ではなく,一石回路構成を採用することにより,13.56MHzの高周波動作を検討する予定である。
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