研究概要 |
高電圧機器の試験や測定精度に関する国際規格(IEC規格)が近年大幅に改定されたが,特に測定が最も困難な裁断波雷インパルス電圧測定に要求されている測定精度については,現在の技術水準では実現が困難であるとの認識が行き渡りつつある。本研究では,この厳しい規格を十分に満足するような雷インパルス電圧測定システムを開発することを目的に,数値解析コードNEC-2を用いて,測定システムの応答特性のなかでも特に重要な直角波電圧印加後百ns程度の間の応答を評価し,測定システムの応答に影響する種々の要素について検討を行なった。その結果,以下の事項が明らかとなった。 (1)シールド環の吊下げ線と水平リード線の接続点で生じる反射・透過波が測定システムの応答に極めて重要な役割を果たしていることが判明した。これにより,抵抗分圧器単体あるいはそれとシールド環のみを個別に設計していた従来の設計手法はそれほど適当ではないことが示された。 (2)上記により,これまであまり配慮されていなかった吊下げ線の数を変化させることによって,システムの応答特性が大きく変化することが明らかになった。また,吊下げ線と水平リード線の間に第2の制動抵抗を挿入することにより,応答に現れる振動をより効果的に抑制できる場合があることなどが示された。 以上の成果は,それぞれ1件の雑誌論文および国際会議論文として平成12年に発表されるとともに,電気学会主催の大会で1件の口頭発表が行われた。また,これら以外に数値解析法に関する著書を共著にて1冊執筆した。さらに雷インパルスに関連した雑誌論文3件,国際会議論文2件が印刷公表され,国内の大会で4件の口頭発表が行われた。 なお,今年度中にNEC-2とは異なる計算原理に基づく数値解析プログラムの開発が終了したため,これを用いて次年度は裁断波雷インパルス電圧の測定時に生じる誘導雑音の検討を予定している。
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