研究概要 |
高電圧機器の試験や測定精度に関する国際規格(IEC規格)が近年大幅に改定されたが,特に測定が最も困難な裁断波雷インパルス電圧測定に要求されている測定精度については,現在の技術水準では実現が困難であるとの認識が行き渡りつつある。本研究では,この厳しい規格を十分に満足するような雷インパルス電圧測定システムを開発することを目的に,数値解析コードNEC-2を用いて,IECの直角波応答測定推奨回路と裁断波雷インパルス電圧試験回路の直角波応答特性を比較検討し,測定システムの応答に影響する種々の要素について検討を行なった。その結果,以下の事項が明らかとなった。 (1)シールド環の吊下げ線と水平リード線の接続点で生じる反射、透過波が測定システムの応答に極めて重要な役割を果たしていることが判明した。これにより,抵抗分圧器単体あるいはそれとシールド環のみを個別に設計していた従来の設計手法はそれほど適当ではないことが示された。 (2)上記により,これまであまり配慮されていなかった吊下げ線の数を変化させることによって、システムの応答特性が大きく変化することが明らかになった。また吊下げ線と水平リード線の間に第2の制動抵抗を挿入することにより,応答に現れる振動を効果的に抑制できる場合があることが示された。 (3)裁断波雷インパルス電圧試験回路の直角波応答は,I.G.回路の内部インピーダンスに大きく依存することが明らかになった。I.G.回路の内部インピーダンスが高い場合には,その応答特性は直角波応答測定回路のそれに近いものとなるが,I.G.のインピーダンスが低い場合には実験的応答時間が長くなるなどやや異なった応答特性を示す。 (4)高インピーダンスI.G.が用いられる場合には,球電極の存在はその測定システムの応答にあまり影響しない。一方,低インピーダンスI.G.が用いられる場合には,球電極は測定システムのUSRパラメータに大きな影響を及ぼす。特に,制動抵抗が付加されているシステムにおいては,部分応答時間で8〜20ns,実験的応答時間で8ns,整定時間で25〜50ns程度の差が生じることが明らかになった。 以上の成果は,2件の雑誌論文として印刷公表されるとともに,国際会議で1件,電気学会主催の大会で2件の口頭発表が行われた。また数値解析法に関する著書を共著にて1冊執筆した、上記以外に、この期間に行った研究の成果は,4件の雑誌論文として印刷公表され,国際会議で4件、学内紀要論文として2件,国内研究会、大会で7件の発表が行われた。
|