送配電線から発生する電界および磁界の強度・位相を考慮し、これらの電界・磁界が送配電線下周辺に位置する人体モデル(均一媒質)内部に誘導する電流の密度を解析するために、まず単位量の極低周波電界および磁界が楕円体状人体モデルに印加された場合のモデル内部の誘導電流密度を解析し、以下の成果を得た。 1.送配電線を直線導体として模擬する場合、電線周辺の磁界環境は水平・垂直の2次元磁界と考えられる。そこで、2次元磁界による合成誘導電流密度に対して水平磁界および垂直磁界が及ぼす影響を解析し、以下の特性が得られた。 (1)長軸1.7m、短軸0.25mの回転楕円体モデルにおいて、水平磁界が垂直磁界に対して最大値で約2倍の誘導電流密度を発生させ、合成誘導電流密度におよぼす影響が大きい。 (2)楕円体状人体モデルの胴回りが等しいとして決定した回転楕円体と偏平楕円体モデルを比較したところモデル形状の違いによって、偏平楕円体モデル内部の方が大きな誘導電流密度を発生する。 (3)モデル内部において水平・垂直磁界の位相差が合成誘導電流密度におよぼす影響は、それぞれの外部磁界による誘導電流密度の大きさの差が小さい場所ほど大きくなる。 2.送電線下地表面近傍の広い範囲で存在する垂直電界(lkV/m)と2次元磁界(1μT)が人体モデルに同時に印加された場合、モデル内部の位置によって異なるが最大値に着目すると、電界による誘導電流密度が圧倒的に大きくなることがわかった。しかし、電界は遮へい等により低減されやすいため、容易に磁界による誘導電流密度と影響をおよぼし合うことが考えられる。また、垂直電界と水平磁界による誘導電流の合成には位相差が大きな影響をおよぼす場合があることもわかった。
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