研究概要 |
Si-ULSIにおいてCu配線が適用され始めたが,その拡散バリヤには極薄でもCuの拡散を高温まで抑制し,かつそれ自身低抵抗な材料が切望されている。そこで本研究では,拡散バリヤとして低抵抗で同じNaCl構造を持つIVa族及びVa族窒化物(TiN,ZrN,HfN,VN)を合金化した置換型合金とすることで,合金化による抵抗率の増加を抑制しつつ,バリヤ自身の安定性を高めることを目的として検討を行った。更にバリヤの構造とバリヤ特性との関連についても検討した。まず,合金バリヤの構成要素のZrNを用いて,高配向成長と極めて微結晶状態のZrNを作製し,そのバリヤ特性の違いを検討した結果,高配向成長のバリヤは800℃熱処理後に再結晶化により系が劣化し,さらに薄層化により結晶粒界を通してCuの速い拡散が生じるのに対して,微結晶状態の膜は20nmでも十分に高安定なコンタクトを実現できることが明らかとなった(2001年5月国際会議で発表予定,Appl.Surf.Sciに掲載予定)。そこで,微結晶状態のTiN及びZrNを合金化し,その組成を変化させて作製した結果,この合金バリヤは組成によらず,微結晶状態の置換型合金として作製が可能であり,その抵抗率は90μΩcm程度と合金バリヤとしては十分に低いことがわかった。さらにこのバリヤは10〜20nmでも高安定なコンタクトを実現できるという有用な結果を得た。これに対し,ZrNとVNを組み合わせたZrVNは,Zr-richな組成ではZrNが優先的に得られ,ZrNとVNが置換する構造とはならないことがわかった。これは,それぞれの窒化物の標準生成熱の値が大きく異なることに起因するものと思われることから,今後はそれらも考慮した合金の組み合わせを検討する予定である。
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