研究概要 |
本研究によって得られた主な成果は下記の通りである。 1.半導体鉄シリサイド,β-FeSi_2,単結晶を溶液から成長することに初めて成功した。 2.溶液から成長した結晶は化学気相法によって成長されている針状結晶とは異り,粒状の多面体であった。このことは,β-FeSi_2,結晶は針状結晶しかできないとの従来の考えが誤りであり,β-FeSi_2,結晶においても大型の結晶が育成可能であることを明らかにした。 3.Ga溶媒を用いたβ-FeSi_2,単結晶の成長において,成長温度を900℃以下にすることでβ-FeSi_2,単結晶が再現性良く成長できること,また成長温度を910℃以上にするとα-FeSi_2,ε-FeSi相が成長することを明らかにした。 4.Ga溶媒に対するFeSi_2の溶解度を測定し,Ga溶媒が溶液成長に十分な溶解度を有することを明らかにした。 5.β-FeSi_2,単結晶の酸,アルカリに対する腐食耐性を評価した結果,室温では塩酸,硝酸,王水,硫酸,水酸化ナトリウムには腐食せず強い耐性を持つことが明らかになった。 6.β-FeSi_2,結晶が弗化水素酸に腐食されやすいことを見いだし,希釈弗化水素酸に対するβ-FeSi_2,結晶のエッチング速度を調べた。 7.希釈弗化水素酸がβ-FeSi_2,結晶のエッチピット観察用エッチング液として適していることを見いだし,面方位によるエッチング速度の異方性が存在すること,さらにそのエッチピット形状から結晶の面方位が観察できることを示した。
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