カルバゾールを側鎖に有するアクリレートブロックとフルオレン誘導体及びジシアノピビニルアニリン単位を有するアクリレートブロックからなるブロック共重合体を合成した。合成したポリマーは2つのガラス転移温度を示し、ミクロ相分離構造をとっていることが示唆された。このポリマーのフォトリフラクティブ(PR)特性を2光波結合実験により評価したところ、ゼロ電場において4cm^<-1>の利得係数を示し、ゼロ電場駆動可能な材料となることがわかった。電子供与体であるカルバゾール単位と電子受容体であるフルオレノン単位が相の界面で電荷移動錯体を形成し、光誘起電荷移動が起こり空間電場を形成したものと考えられる。 一方、ニトロビニルアニリン単位とチオキサンテン単位を有するコハク酸エステルを合成した。合成物は再結晶により精製可能であるが、一度融点以上にあげ、融解させたのち急冷することで安定な分子状ガラスを形成した。また、両単位ともに633nmにおいて透明であるが、分子ガラスはこの波長で20cm^<-1>程度の吸収を示した。チオキサンテン単位は、電子輸送性であるとともに電子受容体であるため、電子供与体であるアニリン単位と電荷移動錯体を形成していると考えられる。2光波結合実験の結果、ゼロ電場で44cm-1という高い利得係数を得ることができた。この錯体の場合、光電荷の発生が効率的に起こり電荷の拡散により空間電荷が形成したものと考えられる。 以上のように界面での電荷移動や光電荷の拡散を利用することでゼロ電場駆動可能なフォトリフラクティブ素子を作製することができた。これまでの有機フォトリフラクティブ材料のほぼ全てが高い電圧(30-50V/μm程度)を素子の駆動のために必要とした。種々のアプリケーションを考えても、ゼロ電場駆動素子の開発はこの分野における大きなブレークスルーとなる。
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