研究概要 |
漏えい弾性表面波(Leaky SAW:LSAW)とその高次モードである第2LSAWは,通常のSAWよりも電気【tautomer】表面波の変換効率が高い,音速が速い,温度特性が良いなどの特徴を持ち,SAWフィルタの高周波化,広帯域化,高安定化に有効であるが,その励振・伝搬の際,バルク波を放射するため損失が大きい.本研究では,『波動は速度の遅い領域へ向かおうとする』という性質を利用して,これらのバルク波放射が共にゼロとなるLSAW,すなわち『バルク波フリーLSAW』を実現させることを目的としている.本年度の研究実績を以下に示す. 1.第2LSAWの伝搬減衰の抑圧:石英薄膜をタンタル酸リチウム基板上に形成することにより,第2LSAWの伝搬減衰が約1/3に低減することを見出した.これは薄膜の形成により基板の異方性が実効的に変化した結果によるものであることを理論的に明らかにした. 2.ランガサイト基板への適用:温度特性に優れた基板として最近注目されているランガサイト基板に誘電体薄膜装荷によるLSAW伝搬減衰の低減を適用した.五酸化タンタル薄膜,または石英薄膜を基板上に形成することにより,基板のある範囲のカット角においては,LSAWと第2LSAWの伝搬減衰を低減できることを理論的に示した.また,実際に五酸化タンタル薄膜をオイラー角(0°,140°,67°)のランガサイト基板に形成することにより,LSAWの伝搬損失が約1/3に低減することを示した. 今後は,これらの成果を踏まえて次世代通信デバイス用低損失フィルタを検討したい.
|