研究概要 |
半導体ナノ構造作製において、従来のドライエッチングに比べ低損傷なエッチング法を開発することは、非常に重要である。放射光を用いた光化学反応によるエッチングは、イオン衝撃が無いため低損傷であること、光の直進性により垂直エッチングが可能なことから期待されている。本研究課題では、重要かつ基本的な材料系であるSi基板上SiO_2のエッチングを取り上げ、その放射光励起脱離反応をSTMにより直接観察することを目的とした。今年度は従来のSi(111)基板上だけでなくSi(001)基板上のSiO_2についても放射光照射効果を調べ、Si(111)上とSi(001)上ではSiO_2の脱離のされ方が異なることを見い出した。 Si(111)およびSi(001)上にウェット処理によって形成したSiO_2膜に放射光を照射し、その脱離の様子をLEED観察した。基板温度は700℃とした。その際、放射光の照射による温度上昇(約50℃)を考慮に入れ、放射光を照射していない場合と、放射光を照射した場合を比較した。 Si(111)上のSiO_2では、放射光照射量を5000mA min(約30min)、10,000mA min(約60min)、20,000mA min(約120min)と増加させるに従い、SiO_2が脱離し、Si 7x7構造が現れる。放射光を照射せず同じ時間700℃で保持した試料ではSO_2の脱離が遅く観察され、放射光照射によりSiO_2の脱離が促進されていることが確認された。一方、Si(001)では、放射光照射した試料では同様にSiO_2の脱離が見られたのに対し、放射光照射しなかった試料では2x1構造が確認できず、放射光の照射効果が非常に大きいことが分かった。この結果は、(001)面上のSiO_2脱離の方が放射光に対する選択性が大きいことを示しており、これは放射光照射によるパターン形成に有利であることを示している。
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