赤外レーザー多重反射吸収分光法による表面反応診断システムを構築した。具体的には、表面多重反射計測のための光学系を独自に設計・開発した。この手法では測定感度を多重反射によりFT-IRに劣らないレベルにまで高めるとともに、波数掃引範囲を観測したい領域のみに限定した測定が可能である。振動スペクトルの測定により、表面反応層にどのような化学結合が、どのぐらいの量、生成しているのかを、圧力、ガス流量、RFパワー、バイアス電力などを変えながら調べることを試みた。基板表面に入射させる赤外光としてピコ秒レーザーパルスを用いることから、パルス変調プラズマと組み合わせた振動スペクトルの時間分解測定を行い、プラズマにさらされた基板表面で進行しているCVDの化学反応のダイナミクスを明らかにすることを目指して実験を進めた。 また、上記の作業と並行して、ab initio分子軌道法に基づいてCVD原料であるフルオロカーボン分子の負イオン状態の量子化学計算による解析を行った。フルオロカーボン分子は電子付着断面積が大きく、生成される親分子あるいはフラグメントの負イオンはプロセス結果に大きな影響を与えているものと考えられる。フルオロカーボン負イオンのポリマー膜堆積に対する寄与を調べるために、CF_2付加エネルギーとC-F結合の解離エネルギーを中性種とアニオン種について計算し比較した。その結果、負イオン種へのCF_2付加の方が熱力学的に有利であり、この反応過程はポリマー膜成長への反応経路の一つとして十分に考えられることがわかった。
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