放射光照射によるSi表面酸化・窒化について、基本的な知見を得るための実験を行った。まず、Si基板へ真空中、窒素中、酸素中、および酸素窒素混合雰囲気中で放射光を照射しそのときの表面変化についてオージェ電子分光装置により調べた。放射光照射は高輝度光科学研究センターSPring-8のBL27SU軟X線CVD実験ステーションで行った。基板温度は室温から800℃程度とした。照射前にSi基板を加熱し表面の自然酸化膜を除去し、Si表面を露出させた。 その結果、表面窒化、酸化は雰囲気ガス圧力に強く依存することが見られ、10^<-3>Pa以下では酸化・窒化が起こらず、逆に表面に自然酸化膜が存在するときは光誘起蒸発が起こることが見られた。圧力をあげてゆき12Paで照射したときはオージェ電子スペクトルのピークシフトが見られ表面酸化・窒化が起こることが示された。基板温度を変えて照射したところ室温では表面酸化のみ観察され、表面窒化は見られず酸化に比べて窒化の方が表面反応における活性化障壁が高いことが示唆された。 分子軌道法によりSi表面クラスターと酸素分子との反応について計算を行ったところSi表面が水素終端されているときは活性化障壁を持つが、終端されておらずダングリングボンドを持つときは活性化障壁が小さいことが計算され実験と対応すると考えられる。
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