近年、半導体デバイスにおいては非常な集積化が進み、LSIを構成する素子は非常に微細なものとなっている。これらULSIデバイスにおいて、素子の信頼性に重要な位置を占めているFETのゲート絶縁膜は、0. 1μm世代では膜厚が2nm程度(シリコン酸化膜換算)と、原子十数層程度からなるものが必要となってきている。放射光を照射することで、原子レベルで平坦なSi表面が形成できることが報告され、また放射光軟X線励起CVDでは、真空紫外光源励起CVDにくらべ良質の薄膜が得られることが示されている。そこで、放射光からの強い軟X線により選択的な高励起状態を作り出し、絶縁膜・誘電体膜を作製した。 本研究では、放射光を用いSi表面の直接窒化・酸化を行った。窒素または酸素雰囲気中で軟X線アンジュレータからの放射光を直接Si基板へ照射した。光のエネルギ`は0.3、1.9kevとした。AESによる測定で窒素分圧が低いときは、表面に吸着するだけであるが、12Paまで分圧をあげることで表面にSiN結合が形成することを確認した。また基板温度を200℃まで下げても同様の反応が見られ、放射光により基板表面および雰囲気ガスを励起することで反応を促進できることが示された。さらに、他の電子材料への放射光照射を行い、反応性および薄膜作成の可能性について調べた。その結果、高輝度放射光をa-Si : Hへ照射することで、激しい反応が見られ、急激な水素の脱離、体積変化または結晶性の変化が引き起こされると考えられる。またCaF_2へ光照射を行ったところ、放射光誘起蒸発が起こることが分かり、この現象を利用した薄膜作製を行った。その結果、約10nm/分程度の製膜速度が得られ、XPSなどの測定よりCaF_2が形成されたと考えられる。
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