研究概要 |
大強度パルスイオンビームをジルコン酸チタン酸(PZT)焼結体ターゲットに照射して得られるアブレーションプラズマを用いて,シリコン基板,パイレックスガラス基板へPZTの成膜を行った。成膜は,ビームエネルギー〜1MeV,ビームパルス幅〜50nsのH^+ビームを,照射1回あたりPZTターゲットへエネルギー密度〜80J/cm^2でビームを1回から10回照射して行った。また,基板の設置のしかたで,基板ホルダーのターゲット側に置いた場合(正面堆積),反対側に置いた場合(背面堆積)の2通りの成膜を行った。用いたターゲットの組成は,Zr : Ti比0.5:0.5である。その結果以下の結果を得た。 1.正面堆積では,ビーム照射1回で膜厚400nmの薄膜が生成できた。しかし膜表面にはドロップレットと呼ばれる付着物が見られた。背面堆積では,ビーム照射1回で膜厚40nmであったが,表面にはドロップレットが見られなかった。 2.パイレックスガラス基板上に得られた薄膜の比誘電率(ε_r)は,正面堆積,背面堆積それぞれ,340,23の値を得た。正面堆積で得られた薄膜の比誘電率が背面堆積より大きいのは,堆積したプラズマの量が大きいために,プラズマの内部エネルギーにより基板が加熱されたためと考えられる。 3.ラザフォード後方散乱分析法による薄膜組成の測定で,薄膜中の元素比は,Pb : Zr : Ti : O=1:0.5:0.5:3であることがわかった。よってターゲットの組成と等しい薄膜が得られることがわかった。 4.X線光電子分光分析の結果,薄膜表面には,鉛酸化物の層があることがわかった。しかしラザフォード後方散乱分析の結果には,表面の鉛酸化物層による波形の変化が見られないことから,この厚さは,ラザフォード後方散乱分析法の深さ方向分解能以下の厚さであると予想される。
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