本研究の目的は室温動作が可能でSQUID相等の磁界検出感度を有する磁界センサである高周波キャリア型薄膜磁界センサにおいて、1pT程度の高磁界感度を目指すとともに、1mm以下の小形化を実現することである。このためには小形化の際の磁気異方性の劣化を抑制する必要があり、薄膜センサの素子構造・磁性材料の最適化等によるセンサの小形・高感度化を目指した。本研究ではアモルファスCoNbZr薄膜を微細加工して得られる長さ1mm、幅20μmおよび50μmの磁界センサ素子を作製し、外部磁界に対するセンサ素子のインピーダンス変化および磁区構造変化を詳細に観測するとともに、計算機シミュレーションの結果と併せてセンサ出力と磁区構造変化の対応関係についても検討した。その結果、試料幅の小さい20μmのセンサ素子では試料幅の減少による幅方向反磁界の増加により還流磁区面積の増大が起こることが分かった。さらにこの還流磁区面積が外部磁界の増加とともに増大することでセンサの高感度領域において磁壁移動を引き起こし、磁界感度の低下とともにセンサの周波数特性の劣化をまねくことが明らかとなった。また、この磁壁移動を考慮した場合の外部磁界に対するセンサのインピーダンス変化を計算機シミュレーショウにより定量的に導出した。さらに計算値と実測値を比較することで、この計算の妥当性を明らかにした。これは小形センサ素子の実現において、極めて重要な成果である。
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