研究概要 |
本方式のディスプレイの実現には、蛍光体を励起する大面積かつ高密度のGaN系UV-LEDアレイを得ることが必要である。一般的なディスプレイのサイズ程度の面積を有する適当な単結晶基板は現在のところ存在しないため、大面積のUV-LEDアレイを得るためにはガラス等の非単結晶基板をまず第一に用いなければならない。研究代表者はこれまでに大面積化が可能な基板として無アルカリガラスを選択してきた(Y.Sato et al., J.Crystal Growth 189/190(1998)42.他)。より結晶性の優れたGaN薄膜を得るためには成長温度が可能な限り高い方が望ましいが、この場合、基板の温度はその歪点(667℃)より高くすることができない。本年度はそれに代わる耐熱基板として高融点金属基板の使用の可能性を検討し、その結果、結晶性の優れたGaN薄膜を得ることができたので報告する。 用いた金属としてはTi,Mo,W,Ta,SUS等であり、将来フレキシブルなデバイスに対応することを鑑み、厚さが50μmの薄い箔をいずれの場合においても使用した。また、高精度分子線供給装置を組み込んだ薄膜成長装置により、ガラス基板を用いた場合に結晶性の優れたGaN薄膜が得られる成長条件と同一の条件でGaN薄膜の作製を行った。 成長温度は700℃を中心にして行ったため、懸念された金属成分のGaN薄膜中への拡散は生じていないことを表面分析により確認した。しかし、ガラス基板を用いた場合には強くc軸配向したGaN薄膜が得られるのに対し、金属箔上に直接GaN薄膜を成長した場合にはc軸配向性が弱いものが得られるのみであった。これは結晶の整合性が異なる下地金属多結晶によりc軸配向成長を阻害する規制力が働くものと考えられる。 上記の問題点を解決するために、金属箔の表面に柔軟性を損なわない程度の非晶質薄膜を堆積し、その上にGaN薄膜を成長してみた。その結果、c軸配向性が極めて強いGaN薄膜を得ることができた。この場合の中間層は、その厚みが薄い場合には効果はなく、ある程度の厚みを必要とするが、金属箔の柔軟性は損なわれることはなかった。また、金属箔の表面に対してエッチング処理等の特別な処理を施していなくとも良好な結晶性のGaN薄膜を成長することができた。
|