Bi系高温超伝導体における固有ジョセフソン接合を用いた単電子トランジスタの開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12750292
• 研究機関: 宇都宮大学
• 研究代表者: 入江 晃亘 宇都宮大学, 工学部, 助教授 (90241843)
• キーワード: Bi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶 / 自然超格子 / ジョセフソン接合アレー / クーロンブロッケイド / 単電子トンネル

研究概要

本研究は、Bi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶に内在する自然超格子ジョセフソントンネル接合アレーにおける単電子トンネル効果を明らかにするとともに、同結晶を用いた単電子トランジスタを開発することを目的としており、本年度は主に単結晶上に作成したサブミクロン程度の微小メサの基本性質について検討し、以下の成果を得た。
(1)同単結晶のサブミクロン加工
自己フラックス法により成長した同単結晶を電子ビームリソグラフィ技術、フォトリソグラフィ技術及びArイオンエッチング技術を用いて、同一単結晶上に大きさ0.7μm×0.7μm×(10-150)nm〜5μm×5μm×(10-150)nmのメサを精度良く作製する技術を確立した。
(2)サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーの電流-電圧特性の観測
上記により作製したメサの電流-電圧特性を4.2K〜臨界温度T_cにおいて測定した結果、いずれのメサにおいても電流-電圧特性においてヒステリシスを伴う明瞭なブランチ構造を観測した。
(3)クーロンブロッケイド効果の観測
サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーの臨界電流密度を評価した結果、接合面積がlμm^2以下の場合、固有ジョセフソン接合アレーにおけるクーロンブロッケイド効果により臨界電流密度が接合面積とともに減少することがわかった。
本研究で得られた成果は、Bi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶自身を用いた新規な単電子トランジスタ応用への可能性を示すものであり、本分野の今後の進展が期待される。

研究成果

• [文献書誌] A.Irie,G.Oya,R.Kleiner,and P.Muller: "Transport properties of small-sized intrinsic Josephson junctions in Bi_2Sr_2CaCu_2O_y"Physica C. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] G.Oya,and A.Irie: "New features of subgap structures in intrinsic Josephson junctions of (Bi_<1-X>Pb_X)_2Sr_2CaCu_2O_y"Physica C. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] A.Saito,K.Hamasaki,A.Irie,and G.Oya: "Random telegraph voltage noise in a Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+x> intrinsic Josephson junction "IEEE Trans.Appl.Supercond.. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] A.Irie 外8名: "Critical currents of small Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+x> intrinsic Josephson junction stacks in external magnetic fields"Phys.Rev.B. 62. 6681-6686 (2000)
• [文献書誌] S.Heim,A.Irie,S.Schromm,M.MoBle,S.Rother,R.Kleiner and P.Muller: "Small size mesa structures on Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+□>single crystals"Physica C. 341-348(1-4). 1567-1568 (2000)
• [文献書誌] A.Saito,M.Abe,A.Irie,G.Oya and K.Hamasaki: "Low frequency noise properties of Bi_2Sr_2CaCu_2O_yintrinsic Josephson junctions"Advances in Supercond.. XII. 1120-1122 (2000)