今年度は、我々が新たに提案したNbN/Nb/AlOx/Nb/NbN接合について、その特性評価を行った。特性評価に関しては、臨界電流密度の制御性、接合特性の再現性の観点から検討した。また、接合特性の改善を目指して、超高真空装置を用いての接合作製を行い、接合特性のAl酸化条件依存性の検討を行った。さらに、単一磁束量子(SFQ)回路作製上重要となるグランドプレーン構造を導入し、グランドプレーン上に接合を作製した場合の特性評価を行った。 臨界電流密度Jcの制御性に関しては、Nb層膜厚の最適化及びAl層の酸化条件の検討により、動作温度10Kにおいて3kA/cm^2までの接合を実現することができた。一方、IcRn積的には、0.2mVまでの値となった。ただし、この値は、SFQ回路応用を考えたとき、必ずしも十分な値とはいえず、改善が望まれる。接合特性の再現性については、別のランで作製したチップ6枚を用いて接合特性の再現性を評価した結果、10KにおいてJcのばらつきが最大最小で±32%と良好な結果が得られた。 一方、成膜装置をバッチ式からコードロック式超高真空装置に変更し、NbN薄膜の高品質化及び接合の作製を行った。その結果、接合に関しては、10KでJcが10kA/cm^2、IcRn積が0.4mVのものまで得られており、回路応用が十分可能なレベルにある接合を作製できるようになった。 回路作製上重要となるグランドプレーン構造上に接合を作製した時の接合特性については、Si基板上に直接作製した接合とほとんど変わらず、グランドプレーン表面の凹凸の影響は受けにくいことがわかった。
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