研究概要 |
長距離光ファイバ通信システムの伝送速度・伝送距離の主たる制限要因は、ファイバの波長分散によるパルス広がりと、自己位相変調などのファイバ中の非線形光学効果である。光ソリトンは、波長分散の効果と自己位相変調効果がつりあって生じる安定なパルスであるが、波長分散の波長依存性、すなわち分散スロープの存在下ではパルスの対称性が崩れ、伝送距離が制限される。 本研究では、伝送路中に分散スロープを補償するデバイスを周期的に挿入し、分散スロープによるソリトン波形劣化を抑制するシステムについて検討している。本年度は、本補償手法が有効となるパラメータの条件を、数値シミュレーションに基づいて検討した。 伝送容量40Gbps,中継増幅間隔40kmのシステムで、伝送路の波長分散を0.02ps/km/nm,分散スロープを0.07ps/km/nm/nmと仮定し、数増幅周期毎に補償デバイスを挿入する補償法について検討した。補償デバイスとしては逆分散スロープファイバを想定し、補償区間内におけるスロープを完全に補償するものとした。送信機出力端の光波形としては、半値全幅5psのRZパルスからなる63ビットの擬似ランダムビット列を仮定し、システムの伝送品質は、アイ開口を示す指標であるQ値によって評価した。 まず、補償周期について検討した。分散スロープによる波形劣化が顕著となるのは、3次の分散距離と呼ばれる特性距離によって定められるが、補償周期を3次の分散距離と同等、またはそれ以下に設定すれば、有効な補償が可能であることが予見された。 次に、補償ファイバの長さについて検討したところ、距離による顕著な差は生じないことが予見された。これより、逆分散スロープファイバを用いた補償は、集中定数型デバイスによる補償と全く同様の取り扱いが可能であることが明らかになった。
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