研究概要 |
本研究では,本研究代表者が提案している進化論的計算手法による適応ディジタルフィルタである進化論的ディジタルフィルタ(evolutionary digita filter:EDF)の収束特性の向上と並列実現を目的として,並列形のEDFである分散形EDFを提案し,その特性について評価している. EDFには,(1)多峰性の評価関数空間において極小値にとらわれることなく最小値を探索できる,(2)応用にあわせて評価関数を選択できる,という利点がある.しかし,EDFには,LMSアルゴリズムを用いた適応フィルタ(LMS-ADF)よりも,1入力あたりの乗算回数が多いという問題点がある.これは,EDFが多くの内部フィルタを持ち,これにより多点探索を行っているからである.そこで,本研究では,EDFの収束特性の向上と並列実現を目的として,並列形のEDFである分散形EDFを提案している.提案法では,従来提案してきたEDFの個体群を小さな個体群に分割する.その上で,分割された生物群に対して,生物数が少なくなったという点を除いて元のEDFと同じ処理を行う.さらに,分散アルゴリズムによりそれぞれの分割した小さな生物群から適応度の高い個体を選択し,他の個体群に移民させる. 評価実験により,分散形EDFが,従来の手法であるLMS-ADFだけではなく遺伝的アルゴリズムを用いた適応フィルタ,さらには従来提案してきたEDFよりも収束速度が速く,収束後の2乗誤差の大きさが小さいという意味で収束特性がすぐれていることを示した.
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