研究概要 |
本研究の目的は,超高精細画像を対象とした高性能減色手法の確立と,限定色表示手法を利用して色情報を段階的に伝送するスケーラブルな符号化方式を開発することにある.また,ディジタル画像データは複製が容易であるため,これを符号化伝送する際には著作権を保護するための技術の導入が必須であると考え,画像コンテンツに著作者の署名画像の情報を埋め込む電子透かし技術について検討を行っている. 本年度は,まず,減色手法に関する基礎検討として,平均値制限法によるディザ化画像の画質改善について検討を行った.平均値制限法は,輪郭強調と中間調表現を単一プロセスで行うことから,濃淡画像だけでなく,テキストや線画を含む画像のディザ化に適している.しかしながら,中間調の表現は,組織的ディザ法や誤差拡散法に比べ不十分であった.従来の平均値制限法では,着目画素とその周辺の画素の輝度分布をこれらの画素値の平均値を中心とした一様分布と仮定し,この平均値とダイナミックレンジの比より閾値を求めて着目画素のオンオフを決定しているが,濃淡画像おいては,この輝度分布は一様分布よりもラプラス分布に近い分布となっている.本研究では,この点に着目し,輝度分布の近似にラプラス分布も用いることで,平均値制限法によるディザ化画像の画質を改善する手法について検討を行い,良好な結果を得た. また,電子透かしに関する基礎検討として,直交変換を利用した電子透かしにおけるデータ埋め込み法について検討を行い,「増減反転法」と「変化量保存法」の2手法を提案した.これらの手法を用いることで,透かし合成画像から正確に透かし情報を抽出することができる.本方式を用いて実験を行い,攻撃を受けていない場合には透かし合成画像から正しく透かしを抽出できることを確認し,従来方式との性能比較を行った.
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