本研究では、ルータが自分で収集したネットワーク情報を用いて適応的にネットワーク制御を行う適応型ルータについて、優先制御を用いた制御法を提案する。 ARQは通信品質の劣化に伴いタイムアウトなどによる再送パケットを発生させるが、その再送パケットがさらにネットワーク品質を劣化させる原因となる。そこで、優先制御により再送パケットを減少させることができれば、結果として非優先クラスの通信も品質向上する可能性が存在する。 本研究では、TCP/IP通信を対象とし、特定TCPストリームに属するIPパケットに対して優先制御を行うことにより、優先クラスおよび非優先クラス両TCP通信のグッドプット向上を実現する。IBM PC/AT互換機にUNIX(FreeBSD)を搭載し、カーネルに試験実装を行い、実験ネットワークにより性能を評価した。その結果、UDPとTCPが混在するネットワーク環境においては、一部のTCP/IP通信に優先制御を適切に行った場合に、優先・非優先両クラスのTCP/IP通信のスループットが向上する結果が得られた。
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