本研究ではインターネットのような大規模情報通信ネットワークにおける情報探索の効率化について検討している。今年度の計画では、この分野の未検討課題2つについて明らかにすることを狙って研究を進めた。 ひとつ目は、情報探索に用いる資源の効率的活用手法の検討である。これまでの研究では、ネットワーク内に数多く散在する情報源(インターネットの場合、不特定のユーザにアクセスを許す情報を格納するWWWサーバなどに相当)の中から目的とする情報を探し出す場合の効率の評価は、各情報源にその目的情報が存在する確率を仮定し、探索に要するコストのみから行っていた。しかし実際の探索を考えた場合、探索に用いる資源(通信に要する帯域、計算機の演算処理能力など)を確保し、これを適宜分配してパラレルに探索を進めることが多く、その際の資源の効率的な分配方法を確立することは非常に重要な問題となる。一般に、ある情報源を探索した場合にそこから目的情報が発見される確率は、その探索にかける資源の配分量が大きい程高くなる傾向にある。今回はこのようなモデルを仮定した場合の効率的な探索手法のひとつを提案し、その手法が有効であることを示した。 もう一方の課題は、ネットワーク内の情報源を巡り、探索を繰り返し行っても、目的の情報が見つからない場合、どの時点で探索を止めるべきか、という問題である。ネットワーク内に目的の情報が存在するにもかかわらず、発見できない場合が問題になるが、統計的にそのようなケースを棄却する手法や、発見できなかった場合のペナルティを導入した手法などを既に検討している。このテーマではさらに、探索に要するコストと各情報源に目的情報が存在する確率とが与えられるモデルにおいて、エージェントを用いた探索を考えている。エージェントが単数の場合と複数の場合では問題が異なるが、それらの基本的な手法までは検討を行っている。今後はさらに具体的な探索手法を模索してゆく予定である。
|