研究概要 |
平成12年度は、大きく2つの研究成果が得られた。以下にその概要を示す。 ディジタル信号を処理する過程において,所望の成分を抽出する役割を担うディジタルフィルタの特性は重要である.ディジタルフィルタの次数が小さいと演算量・回路規模を少なくできることから,フィルタ設計問題は一般に所望の設計仕様を満足する最小の次数を探す問題に帰着される.従来,最小次数を推定するための推定式が2つ提案されているが,ともに推定精度が不十分であり設計の無駄が増えてしまっていた.本研究では,理論的な考察を加えることで従来の推定式の問題点を改善し,ローパスフィルタを設計する場面における高精度な最小次数推定式を提案した.従来提案されている推定式との比較により精度を検証した結果,推定誤差を約半分に抑えることができた.また,ハイパスフィルタ等,他のフィルタ設計における最小次数の導出手法も示し,その精度の高さを検証した.これらの研究成果は,論文誌IEEE Trans.Circuit and Systems IIに掲載された. ディジタル画像などを処理するための2次元フィルタにおいては、演算量低減とその設計法の確立が問題となる.本研究では,特にウェーブレット分解などの処理に用いられるスプラインフィルタについて考察し,そのひとつであるボックススプライン関数の離散系として離散ボックススプライン関数を提案し,演算量が低減されて設計の効率化が図られていることを確認した.特に,ディジタル画像を拡大する場面において,拡大倍率が大きいほどその演算量低減効果が大きいことを示した.これらの研究成果は,論文誌IEICE Trans.Fundamentalsに掲載された.また,2000年10月に名古屋市で開催された国際会議IECON2000において発表された.
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