簡易で従来よりも精度の高いアンテナ効率測定法を開発することを目標に、アンテナを回路網理論的に扱い、マイクロ波回路測定で利用されるDeschampsの方法を応用した「改良型Wheeler法」について、適用周波数範囲の実験的検討ならびに従来のWheeler法の簡易性を生かした新たな測定法について考察・検証した。 改良型Wheeler法では、無限大の接地板上の小形アンテナに対して、自由空間および導波管内に置かれたときの反射係数を測定することで放射効率を推定する。なお、導波管の両端はスライディング・ショートで短絡終端されており、推定にあたってはスライディング・ショートの位置を3ヶ所以上ずらし反射係数を測定する必要がある。本研究では、放射効率の測定可能周波数範囲について、ダイポールならびにループアンテナに対して測定を行うことによって考察を行った。その結果、1)導波管の主モードのカットオフ周波数以下、2)導波管の管内波長が非常に大きくなる周波数範囲、3)アンテナとスライディング・ショートとの間の距離が共振長となる周波数の前後、4)導波管の高次モードのカットオフ周波数以上、の4通りの場合について効率測定が不可能であることを明らかにした。また、3)についてはその回避法を考察した。さらに、ループアンテナについては、導波管への挿入向きにより効率が異なることを実験的に明らかにした。このことについては、購入の電磁界シミュレータ等を利用して検討中である。 新効率測定法として、3個以上の異なる放射シールドでアンテナを覆ったときの反射係数を測定し、改良型Wheeler法の測定原理を利用して、放射効率を推定することを実験的に試みた。具体的には、3個の疑似半球キャップを放射シールドとして用い、ダイポールの放射効率を測定した結果、導波管を用いる改良型Wheeler法とほぼ同一の結果を得ている。
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