研究概要 |
本研究では,ベストエフォート型サービスのみが提供されるインターネットにおける高品質かつ効率的な動画像通信の実現に資するため,TCPコネクションの通信品質を劣化させることなく高速かつ高品質な動画像通信を行なうと同時に,ネットワーク全体の通信効率を高めるTCPと公平な通信を実現する動画像レート制御手法について検討を行なう. 本年度は,動画像通信のための効果的なレート制御を実現するため,精度の高いレート推定手法,動画像通信に適したレート制御間隔,動画像トラヒックのレート調整手法に関して適切な制御手法について検討した.シミュレーションによる評価の結果,往復伝搬遅延を32倍したものをMPEG動画像データの構成単位であるGoP(Group of Pictures)の時間で丸めたものを制御間隔とし,パケット棄却率,往復伝搬遅延の観測に基づいて帯域を競合するTCPコネクションのスループットを推定し,動画像品質を調整することにより推定レートに合致した動画像トラヒックを生成,送出するのがよいことを示した. さらに本手法の実用性,実現可能性について検証するため,小規模な実験システムに提案手法を利用した動画像通信アプリケーションを実装し,現実の動画像データを送受し,トラヒック観測,再生動画像の品質評価などを行った.シミュレーションでは考慮されていなかった往復伝搬遅延の変動やパケット棄却の発生パターンなどの影響により提案手法では十分効果的な制御ができないことが明らかとなったため,実験結果に基づいてレート制御の改良を行った.新たに提案したレート制御手法を用いることにより動画像品質の変動や劣化を抑えつつ,TCPと公平な動画像通信が可能となることを示した.
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