研究概要 |
本年度は,マルチキャリアを用いた符号の順列と組み合わせを用いたマルチコードCDMAの構成法に関して検討を行った.マルチコードCDMA方式は,低速なデータはそのまま拡散変調するが,高速なデータの場合,ビット系列を直並列変換し複数の低速ビットデータ列として扱う.それぞれのチャネルに複数の直交した拡散符号系列を割り当てることによって,同じ帯域幅,同じ処理利得の複数のチャネルを同時に送信する方式である.しかし,各端末に用意できる拡散符号の数には限りがあるため,より少ない符号でさらに高速な伝送を行える方式が望まれている.そこで,本研究では,拡散符号の順列・組み合わせを用い,複数キャリアで情報を伝達する方式を検討する.従来,拡散符号の組み合わせを用いた並列組み合わせ方式等は提案されているが,本研究では,さらに複数キャリアとキャリア番号の順列を取り入れてより多くの情報をより少ない符号とキャリアで伝送しようとするものである. 簡単のために小さい数値による例を示す.端末には,拡散符号が5個用意されており,二つのキャリアを用いて伝送することを考える.各キャリアに二つの符号チャネルを用いて符号の選択状態にも情報を乗せることを考える.すると,各キャリアについて,それぞれ5個の符号の中から任意の2個を選ぶ組み合わせは10通りある(_5C_2=10).さらに,それらの符号の組み合わせを2個のキャリアに配置する重複順列は_<10>II_2=100.従って,全部で100通りのパターンが存在する.複数ユーザがいることを考慮して,一つの端末においてはその100パターンのうち64パターンしか用いないとすると,符号とキャリアの状態に6ビット分の情報を乗せることが可能になる.当然,上記は説明のために単純化した場合であり,ユーザの符号の割り当て方,分離の方法や誤りが起きることを考慮していないため,実際にシステムにするときには,誤り訂正の方式,情報のマッピングの方式を詳細に検討する必要がある.従来,拡散符号の組み合わせを用いた並列組み合わせ方式等は提案されているが,本研究では,さらに複数キャリアとキャリア番号の順列を取り入れているため,より少ない符号にてより多くの情報を伝達できるものと考える.本年度は,上記検討を行った結果,従来システムと同じ帯域で誤り率特性を維持しつつ約2倍の情報量を伝達可能であることを示した.
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