昨年度の研究で得られた、α関数状シナプス後電位特性と指数関数的に減衰する不応性を仮定したニューロンモデルにおいて、出力パルス間隔が単純な周期ではない動的な振る舞いを示し得るパラメータを効率的に決定するパラメータ探索法について本年度は検討した。一般に、非線形システムのパラメータ設定は、多数のパラメータから少数のパラメータを分岐パラメータとして選び、このパラメータに関する多数の分岐図をあらかじめ得て、これらの結果を参考にパラメータを設定する方法が従来採られていた。これに対し、本研究では、遺伝的アルゴリズムを用い、単純な周期にならない応答を示した時に高い適応度を与えるという方法でパラメータ探索を行った。この結果、比較的単純な遺伝的アルゴリズムを用いたのにもかかわらず、複数の周期的入力パルスに対して、このパルスニューロンモデルが継続的な応答を示すパラメータが分岐図に基づく方法に比べて容易に得られるという結果を得た。この結果は、単独のニューロンモデルとしてもパラメータ数が多いスパイク応答型モデルにおいて、その応答特性を所望のものにするためのパラメータを比較的容易に得る方法を示しており、スパイク応答型ニューロンモデルの使い勝手を向上させる道を拓くものと言える。 また、動的な神経回路網の制御にとって従来法より適していると考えられる制御法として、強化学習を用いたカオスの制御を取り上げ、この制御法がカオスニューラルネットのような動的な振る舞いを示す神経回路網の制御に有効であることを確認した。この結果は、本研究で主に取り扱ったスパイク応答型のニューロンモデルにおいて、決定論的な入力に対する応答特性の制御にこの制御法が適用可能であることを示すものである。
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